「桜を見る会」に奥様と出席されたことはありますか？

ありません。「桜を見る会」は昨今問題になって注目を集めましたが、吉田茂首相が最初に開催したという歴史のある集まりです。歴代の首相が主催し、新宿御苑に8000人から1万人も集まる大規模な集まりです。主催者はその時の首相で、内閣官房が招待者を取りまとめて、内閣府が招待状を送付する仕組みです。

僕は社会人としての初任がテレビ局の政治部記者の首相番でした。この首相番というのは、とにかく首相の後について行って、何を発言するか、一言一句漏らさず聞き取るのが仕事です。ですから僕は中曽根康弘首相にぶら下がって、仕事としてこの「桜を見る会」に行ったことはあります。

「桜を見る会」と言うといかにも私的なイベントのようですが、皇族方から各国大使、大臣や最高裁長官、国家議員、高級官僚を始め、財界、スポーツ界、文化芸能界、学術界の著名人がたくさん招かれます。自衛官のような国家に功労があった方もたくさん呼ばれます。

類似の行事としては天皇陛下が主催して赤坂御苑で開催する「春の園遊会」「秋の園遊会」がありますが、あちらが2000人規模ですから、いかに大規模な集まりだったか分かるでしょう。開催中、新宿御苑には一般客は入れません。

他にこれは環境大臣が現在は主催している秋の「菊を観る会」というのもあるんですが、こちらはだいぶ小規模です。

以上のように政治部記者時代は、必要があれば、仕事として「桜を見る会」に紛れ込むことができました。

記者を辞めてからもずっと交流が続いていたとある政治家が首相になり、ご自宅にうかがって飲むのにお付き合いしていたら、この話題になって、「お前、来る気があるなら招待するぞ」とおっしゃって頂けました。でもこの時僕は、「桜は、僕は親しい友人たちと飲みながら、散って行くのを静かに観る主義なんですよ」と生意気なことを申し上げて、お断りしています。その首相は「相変わらず生意気なことを言って、お前らしいな。来れば箔が付くのに」と苦笑いされました。ただ、せっかく誘ったのにと、ちょっとすねたみたいでした。

以来、2度ほど別ルートで打診を受けたことがあるんですが、そうやってその首相に直接断った手前、お断りし続けてきました。園遊会を含めて、ああいうものは僕の趣味ではありません。それに、もっと呼ばれるべき方々がいます。