質問
関西在住の者です。
シンガポール在住時、NUSの英語コースで知り合った東京出身の若い女性が自己紹介でこちらの美術館でお勤めしていたとおっしゃいました。
当時の私は名前しか知らなかったので、「美術館でお勤めなんて素敵ですね」とだけ返した記憶があります。
後々、彼女がお嬢さん育ちとわかったのですが、この美術館で職を得ることはステイタスでもあるのでしょうか。
小説『あのこは貴族』みたいな世界が東京にはあると知ったのはもっと後のことでした。
当時の私は「これだから地方の人は」と思われるような反応だったのでしょうか。
回答
対応はそれで問題なかったと思います。
美術館の学芸員というのは、そもそもポストの空きが極めて少ないんです。大学で「学芸員資格」は取得できますが、実際に学芸員として採用されるには、だいたい大学院レベルで、西洋美術史や日本美術史、美学や芸術学なんてものを専攻する必要があります。
大学院でそんな他の就職機会が少ないものを専攻できるのは、やっぱり豊かなおうちのお嬢さんが多くなります。少なくとも、お嬢さんが家にお金を入れることは期待していません。学芸員になれなかったら、大学に残って研究を続けるか、お嫁に行くかのほぼ2択になります。
そして就活ですが、だいたいは館長を中心に面接して決まります。先輩学芸員が採用に関わったという話は、寡聞にして聞いたことがありません。
この採用で、国立や公立の美術館の学芸員は、「公務員」ないし「準公務員」ですから、あまりコネ採用を聞きません。大物政治家レベルのコネを使えば、入れるかもしれませんが。
しかし私立の美術館は、私立ですから、当然ですがいろんな事情が考慮されます。そして人気の私立美術館には、ポストの空きがあれば、応募者が殺到します。
この時に面接をして採用を決めるのも、主に館長さんなんですが、山種美術館の館長は山種グループの創業者として有名な山崎種二さんのお孫さんである山崎妙子さんです。出光美術館は出光興産創業者の出光佐三さんのお孫さんの出光佐千子さん、かつてブリヂストン美術館と言ったアーティゾン美術館の館長は石橋寛さん、根津美術館は東武鉄道グループ創業者の根津嘉一郎さんのお孫さんの根津公一さんといった具合です。セゾン現代美術館の館長は堤清二さんの息子さんの堤たか雄さんが館長です。
五島美術館だけ、3代目の五島哲さんが社長を務めた東急建設を倒産寸前にしてグループ企業が穴埋めをした上、若くして急死したのでほぼ五島家(東急創業家)が途絶えたため、五島家が絡んでいませんが、先述の出光の出光佐千子さんや三菱UFJの社長などを歴任した畔柳信雄さんなんかが理事として、ズラッと名を連ねています。
三井記念美術館や静嘉堂文庫の館長は学者さんですが、運営母体である三井本館には三井総領家の当代当主、三井八郎右衛門さんが、静嘉堂文庫美術館は岩崎正男さんが理事としてちゃんと名を連ねています。住友財閥系で京都に本館がある泉屋博古館も理事に住友吉左衛門さんがいます。三菱地所が運営母体の三菱一号館美術館の館長が美術史家の池田祐子さんであるように、この辺はもう古過ぎて、創業家の関わるところではないと言うことでしょう。
これは東京ではないですが、名古屋の徳川美術館の館長で、運営母体である徳川黎明会の会長を務める徳川義崇さんは尾張徳川家の第22代当主といった具合です。
私立美術館というのは、質問者さんがおっしゃった「あのこは貴族」の世界なんて、鼻で笑えちゃうレベルの現代の名家が運営の中心になっているんです。「あのこは貴族」なんて、はっきり言えば、僕の実家にも劣るぐらいです。
こうなっている最大の理由は、創業家財産の相続問題でしょう。私立美術館というのは、現在では運営母体がおおむね「公益財団法人」になっていると思います。「公益財団法人」というのは「公益目的事業」というものを営んでいる「公益性」が厳しくチェックされるので、容易には設立できないんですが、いったん設立出来れば、税法上極めて優遇されます。美術館であれば「芸術振興」ということで、ほぼ認められます。
また公益財団法人にはオーナーはいませんが、実質的所有者を財団の理事長であると見ることができます。僕は若い頃、副業で医療法人や学校法人の売買の仲介をやって、大きく財産を構築したんですが、オーナーの交代は理事長や理事会の交代をもって行っていました。
例えば大きな私立病院は、だいたい社団医療法人の手によって運営されています。やっぱり「公益性」と「非営利性」が設立の認可を受けられるポイントです。厳密に言えば、社団医療法人の設立者が亡くなると、その財産は認可した都道府県に帰属します。しかしこれで大病院がいきなりなくなると、困る人がいっぱいでます。ですから事実上は後任の理事長に承継されます。しかしこの承継にはほぼ税金はかからない仕組みです。だって理事長を交代するだけですから。
僕らが構築したビジネスモデルは、赤字で立ちいかなくなった病院(社団医療法人)を僕らが買い取って、僕らが理事長など理事会の過半数を押さえる。それで病院の経営を立て直して、新しい買い手を見つけて売却、お金を受け取ったら理事長など理事会のメンバーを一斉に交代するというものでした。お金は動きますが、売買に際して、僕らが所得税として払うものなど以外、税金があまりかからないことがポイントでした。
理事会のメンバーが交代するんですから、所轄の厚生省(当時)や都道府県の担当者は当然、気が付きます。しかし大きな私立病院が赤字経営で医療の質が保てなかったり、増してや病院が倒産してしまったりするよりはマシと考えてくれるのか、なんらの指摘も受けたことがありません。これをふつうに自分の子女に理事長を交代すれば、事業承継がほぼノータックスで出来るわけです。
この究極の形が、公益財団法人の承継ということになります。ですから、美術館の理事長はそのコレクションを構築した創業家の関係者が就任していて、理事会はそのグループ企業のトップ、取引銀行のトップ、美術史などの学者、そして日本を代表する名家の方なんかがズラッと名を連ねることになるんです。一般人が入る余地はほとんどありません。
さて本題に戻ります。人気の私立美術館の学芸員というのは、空きがなくて極めてなりにくい仕事です。採用されるのは大変です。この採用にあたって、コネのみで採用されたという話はあまり聞きません。しかしたくさんの応募者があった時、その仕事をこなす能力があることを前提として、理事長や館長、有力な理事と繋がりがある人が採用されやすいと考えるのが自然でしょう。
特に古い名家では、お嬢さんに営利企業には勤めさせたくないという考えが今も残っています。「労働の対価」として初めて「収入」というものを得た内親王は黒田清子さんですが、お勤めになったのは、山階宮家の息子さんの山階芳麿侯爵が設立した「山階鳥類研究所」の非常勤の研究助手というポストでした。日本最高の名家である天皇家にしてそうなんですから、お嬢さんを美術館の学芸員という公益性が高い非営利の職業に就かせたいと考える良いお家は多くなるわけです。結果として私立美術館の学芸員さんには、本物のお嬢さまが多くなる仕組みです。
でも本物のお嬢さまは、僕の経験上、むしろ質素なものですし、出自などに関してあれこれ言われるのを嫌がるものでした。だから応答は「素敵なお仕事ですね」でもう十分です。
華族制度が崩壊した今、日本にはもはや上流階級はなくなった、というのが僕の考えです。しかし、ゴルフ、テニス、乗馬といった良家の子女の嗜みとされるスポーツの、会員になり難いとされる倶楽部に入れば、元宮家や元華族がズラッと理事会や会員に名を連ねています。僕が所属しているゴルフ倶楽部、テニス倶楽部、乗馬倶楽部は皆そんな感じです。
僕は来月、友人が会員のとあるゴルフ倶楽部を友人と回る予定なんですが、ここは白洲次郎さんが理事長をされていた当時、日曜日に田中角栄首相が米国大使を伴って訪れたのに対し、白洲次郎さんが英語で「日曜日はメンバーズオンリー」と答えて、プレイを断ったという逸話が残っています。首相を断るレベルのゴルフ倶楽部はいくらもあり、僕が会員のゴルフ倶楽部も、現役のとある首相から、なんとか会員になってプレイ出来ないか相談された経験があります。この時も「たぶん無理でしょう」とお答えしています。
美術館の学芸員はそこまで開かれていないわけではないですが、やっぱり本物のお嬢さまが多いのは確かです。
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