質問
TSMCのような半導体製造受託企業が日本に出来なかったのは、
日本企業の自前主義が原因なのでしょうか?
他にも原因が有ったのでしょうか?
回答
日本ではTSMCみたいな「ファウンドリー」を、「下請け」と見たんだと思います。となると、誇り高い大手電機メーカーがやる仕事ではありません。
半導体業界の特にメモリ半導体では、巨額の設備投資を行うバッファーとして、シリコンウエハ製造などの半導体前工程をファウンドリーに分業化することが、1990年代以降急速に進みましたが、この思考の切り替えに遅れた日本の大手電機メーカーが、巨額投資を続けられなくて、一気に半導体業界の主役の座を明け渡したわけです。現在ではファブレスのIPメーカーとファウンドリなんかが半導体製造工程を分業するのが「常識」ですが、日本企業がそれに気づいた時には、もう勝負が決着していたんです。
なお、日本の半導体業界衰退の構図は以前回答しましたが、ロジック半導体で出遅れたことや日米貿易摩擦の影響も大きかったですが、当時の日本の電機メーカーの経営者がおおむね「重電出身」で、半導体業界に対するこうした知見に乏しかったのが、最大の理由だと思います。ですからファウンドリーが重要だとは、ずいぶん後になるまでわからなかったんでしょう。
当時は明確なシリコンサイクルがあったので、大手電機メーカーのトップにとって、4年に1回大赤字を計上する半導体事業部門は、経営上の厄介者扱いでした。このシリコンサイクルの谷でも投資を続けた台湾、中国、韓国の半導体専業メーカーに対して、トップ判断でそこで投資を打ち切った日本の大手電機メーカーは太刀打ちできなかったんです。
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