数寄屋の工務店について質問です。

数寄屋造りみたいな和風建築って、建ててからもたくさんお金が出続けるんですよ。だから建てる段階で「歯を食いしばってお願い」するようでは、後が続きません。例えば中村外二工務店にお願いすれば、メンテナンスのたびに職人さんに京都から来て頂かなければなりません。工務店側は建てたものがちゃんと管理されず朽ちていくのは悲しいですから、それが出来そうにない方だとわかると、やんわり断る可能性が高いです。だいたいご予算の半分以下で建ててもらって、残りをメンテナンス費用に回す見当でしょうか。

僕の実家には母屋とは別に、趣味人の祖父が、宮大工さんに昭和30年代に建ててもらった和風建築の「離れ」があります。母屋とは木の回廊で繋がっていて、濡れ縁もあります。立派な日本庭園があって、鯉が泳ぐ池もあり、縁側に座って鯉に餌をやれます。僕が昔、実家にいた時、ここで暮らしていたこともあり、実家で一番のお気に入りスペースです。

しかし維持費にめちゃくちゃお金がかかるんですよ。宮大工さんに具合を見てもらって手を入れて頂いたり、庭園の管理なんかで気持ち良くお金が出て行きます。定期的に土台が朽ちていないか点検して、水回りを見て、必要な手当てをする。何十年か1回屋根を葺き替える。

たまりかねた従兄弟が、潰してしまって芝生にするか、貸家を建てて他人に貸したいと言い出しました。僕にとってはこの思い出深い離れがなくなるのは耐え難かったので、従兄弟と相談して、僕がこの離れだけ、自分の宿泊用という名目で譲り受けました。以来、僕からお金が出続けています。

本格的な数寄屋建築を建てるということは、この覚悟を決めることです。よほどの覚悟とお金の余裕がない限り、オススメはしません。

数寄屋大工さんがいる工務店であれば、「中村外二工務店」のほか、東京の「藤森工務店」「水澤工務店」、横浜の「鈴木工務店」、伊勢原の「内田工務店」、京都の「山中工務店」「野口工務店」、新しいところで「ヤマショウ」なんかが数寄屋建築をやっている工務店として、とりあえず思い付きました。例えば京都の大徳寺さんは「山中工務店」です。将来を考えると出来るだけ近い工務店がいいでしょう。

いい数寄屋大工や宮大工はもう数が少ないし、忙しいです。ですから生半可な依頼は易々とは引き受けてくれないでしょう。中村さんとこに引き受けてもらうのに、20年ぐらいかかった人もいます。

それと2代、3代とお付き合いすることも考えましょう。中村外二さんのところは有名な初代がいて、目下三代目です。みんな自分たちの建築物を大切にしているし、誇りにしています。だから施主を選ぶんです。

ちなみに僕の実家の離れを手がけた宮大工の棟梁は、本来、寺社建築が専門で、一般個人宅は引き受けていなかったそうです。ところが祖父と芸者遊びかなんかで意気投合して、祖父の依頼を引き受けたという伝説が残っています。祖父の出来心のおかげで、孫の代までお金がかかっています。でも我が家を建てる時、僕も茶室や和室を当代の棟梁にお願いしてしまいましたが😅。