キャシーウッドのりおぽんさん的評価をお聞かせいただけないでしょうか？

「投資家」と「ギャンブラー」の違いって何なんでしょうか？よくネットで両者は「違うんだ」という投資家擁護論がありますが、果たしてどうでしょうか。

まず投資家は企業の成長に資するという解説がありますが、これは企業が新株を発行したりして、その資金調達を支援した場合です。一般的に投資家はその企業の株を買って、株の価値を上げて企業が新株を発行する価格を上げたり、発行しやすくしたりなど、間接的に協力するだけです。

ギャンブラーは短期的な一攫千金を狙い、投資家は長期的な利益モデルで投資するから違う、という説明も見たことがあります。でも、プロのギャンブラーは一攫千金なんて狙わず、長期的な収支をバランスさせます。一方、多くの個人投資家は、たいした下調べもせず、期待収益を計算することもなく、「この銘柄は儲かるんじゃないか」程度の判断で、投資先を決めます。これはまさにギャンブルそのものです。

ヴァネッサ・セルブストという女性をご存知でしょうか。かつてのポーカー女性世界チャンピオンです。MITやイェール大学を卒業して、マッキンゼーに勤務しました。その合間にプロポーカープレイヤーとして活躍、2018年に引退するまでの10年ちょっとに稼いだ生涯獲得金総額は1300万ドル以上だそうです。彼女が引退したのは、レイ・ダリオ率いるブリッジウォーター社に入社して、ヘッジファンドの投資戦略立案に携わるためでした。

彼女は果たしてただのギャンブラーと言っていいのでしょうか。ブリッジウォーターの採用者がギャンブラーと投資家はぜんぜん違うと思っていたら、彼女を採用しないんじゃないでしょうか。少なくとも、適当に投資先を決めている一般個人投資家よりは、僕ははるかにきちんとした戦略に従って、ギャンブルしていると思います。

さてキャシー・ウッドです。2022年にハイグロがメタメタに株価が下落したことがあります。その時、キャシー・ウッドはハイグロを買い続けて、大きな損失を出しました。株クラでも彼女を嘲笑う人がたくさんいました。僕の質問箱にも「キャシー・ウッドをどう思う？」という質問がたびたび寄せられました。

その時、僕は「キャシー・ウッドは、大博打を打っている最中だと思うよ」と回答してきました。彼女はハイグロがアホみたいに上がった2020年前後では順張り投資家でしたが、「ハイグロは将来的に儲かる」と考えて、急落時にもその方針を堅持、逆張り投資家に転じたんですね。

逆張り投資家にとって、訳も分からず右往左往している一般個人投資家から嘲り笑われるのは、勲章みたいなものです。一般人が理解出来ない投資をしなければ逆張りとは言えません。そして逆張りには緻密な計算と猛烈な精神的なタフさが要求されます。

ARKKで僕がぜんぜん評価していないTSLAを組み入れ首位にするなど、僕とキャシー・ウッドの分析結果には違いがあります。TSLAが足を引っ張って、旗艦ETFのARKKの運用パフォーマンスは最近あんまり冴えないようです。それでも彼女は淡々としているようです。

さきほど「大博打を打っていると思う」と言った通り、彼女の投資にはギャンブラー的な側面があることは否めません。しかし自分の分析を信じて、大損しても何一つ弁解することなく、淡々と逆張り投資を続けられるんですから、僕は「相当タフな投資家」だとも思って尊敬しています。