どのようにすれば、りおぽんさんの様な読み易く文章に纏められるでしょうか。

これでも僕は「文章を書くプロ」でしたので、僕みたいにというのは、けっこう難しいです。僕は「20字×80行でコラムを書け」と言われたら、これを79行でも81行でもなく、80行目の半分以下まで書いてまとめる、というアホみたいな芸当が当たり前のこととしてできます。

それもPCが普及する前は手書きでしたが、「トロトロと書き直していられるヒマな商売はしていない」と言われたので、僕は鉛筆ではなく、サインペンで原稿を書いていました。当然、ほぼ一発で80行にまとめなくてはなりません。

昔はインターネットなんてなかったので、取材現場にあった公衆電話からデスクの電話をかけて、口頭で記事を送る「電話送稿」もよくやりました。この時、現地で下書きなんてできませんから、頭の中で記事をまとめて、それを口頭で読み上げていくんです。時間を争う仕事だし、トロトロしているとデスクに怒鳴られるので、これも一発で決める必要がありました。電話口のデスクはよく「60行ぐらいで記事にまとめて話してくれ」なんて無茶振りをしてきました。

だから、何かテーマが与えられ、文章の長さが決められると、そこにいくつぐらいのエピソードを盛り込んで、どう論旨を展開していけば話がその長さでわかりやすくまとまるか、おおよその見当が頭の中でつくように、僕は「訓練されて」いるんです。

日本のメディアはそれでもまだ甘くて、米国の有名な週刊誌と仕事をした時、書きっぱなしで原稿を渡したら、「日本の文筆家はオチをつけないコラムを書くのか」と嗤われたので、日本語はもちろん英語でコラムを書くときも、きっちりとオチは付けるよう心がけるようになりました。

僕はもともと文章を書くのが好きでした。小学生の時に「作文」で文部大臣賞みたいないろんな賞をもらっています。中学生からは小説家気取りでたわいもないことを書いては、小説雑誌に応募していました。それでそれなりのところまで行ったこともあります。中学時代の現代国語の先生が、芥川賞の候補になるような小説家でもあり、この先生に「簡潔明瞭な文章の書き方」を徹底的に教えていただきました。

国語は得意科目だったので、大学受験の外部模試では全国1位を取ったこともあります。慶應義塾大学経済学部みたいに、入試科目に小論文があると嬉しかったものです。マスコミの入社試験では、けっこうな長さの小論文が必ずあります。僕はこの対策で早く文章を書く練習をやりました。これも楽勝でした。

それでも、記者としては通用しなかったんですね。僕が最初についたデスクは厳しいことで知られる鬼デスクでしたが、このデスクに原稿を出して書き直しを命じられた回数は、最高で16回です。夕方から原稿を書き始めて、これでどうだと持っていくと、ダメな部分を口頭でぱっぱと指摘されて、デスクは原稿用紙をクチャクチャと丸めて、ポイっと自分の後ろにあるゴミ箱に放り投げるんです。

これが夜遅くになると、後ろも見ずに投げたのが、綺麗にゴミ箱に収まるのを、僕は涙で滲んだ目で眺めていました。明け方になって、もう今度ボツになったら、自分には記者としての適性がなかったと思って荷物をまとめようと思った頃、ようやくデスクから「どうにか使えるものになったんじゃないか」とオーケーが出ました。ただし「記事はもう共同通信のやつの方を使っておいたからな。今度からもっと速く書いてくれ」と言われましたが。

というわけで、僕が文章をかなり高速で比較的わかりやすく、それをあんまり間違わずに書けるのには、長い歴史があります。ちょっとしたスポ根ものが書けるぐらいです。だからどうやったらお前みたいに書けるのか、と言われると、答えに窮します。

ただ、簡潔明瞭に文章を書く技術は、過去の名文家と言われる小説家の文章術を徹底的に研究することで、身に付けられます。本をたくさん読んで語彙を増やすことも効果的です。1500字の文章を2時間で書く、といった訓練も良いです。この時、テーマを「NTT法廃止の是非について論ぜよ」といった具体的なテーマと「海」みたいな茫洋としたテーマの両方でやってみると、効果的です。

でも、これぐらいでは、僕の頃では一人前の記者としては通用しませんでした。まあ文章が下手な記者というのも、けっこういるんですが😅。池◯彰さんとか、僕の知る限り、あんまりお上手ではありません。まあ人それぞれ特性があるものです。

なお、質問箱の回答を僕はゆるゆるな気持ちでやっているので、僕としては回答文はまとまりが悪いし、誤変換がたくさんあります。後から発見してぎゃー😱と言っています。