マネーゲームで種銭を作られたとおっしゃられていましたが、具体的にはどのようなものでしょうか。

これは本当に危なっかしいマネーゲームです。違法ではありませんが、一般人がやれるものではないです。

何かというと、仲間と組んでの、公益法人の売買仲介です。医療法人や社会福祉法人を主に扱いました。もちろんこうした法人は公には売買できません。売買のルールそのものがなく、代表者が変われば原則的にその資産は国に納められることになっています。でもこれではみんなが困ります。病院や介護施設が倒産したら地域の人だって困ります。

でも、医療法人や社会福祉法人の新規設立には当時、高いハードルがありました。需要はあったので、この売買を斡旋したんです。

経営が傾いている病院なんかには、筋が悪い街金やヤ◯ザが入っていることが多いので、これをコワモテのヤメ検に入ってもらって綺麗にします。そしてなぜその病院が傾いたのか分析して、経営を立て直すメドを付けます。

買い手はお金持ちの大病院の院長なんかです。子どもが2人いて、長男には跡を継がせるんだけど、次男も医者になったので、次男にもそれなりの病院を持たせたい場合なんかが絶好でした。こういう人を探し当てなくてはなりません。いきなり数億円単位の病院の売買話なんて持ち込むんですから、話を信用してもらうのがまず大変です。一方、事業拡張意欲の高いお医者さんに取って、社会福祉法人を持つことにはいろいろメリットがあります。

こうした公益法人の売買にはルールがありません。だから売りたい、あるいはもう売らないとクビを吊るしかないお医者さんに話を持ちかけて、その医療法人の売却話をまとめて、僕らが自己資金で買い取って、僕らが理事について実権を握って経営を立て直します。その間に買い手のお医者さんを探して売却、理事を交代するわけです。

利益は売り手のお医者さん、買い手のお医者さん両方から取る手数料です。これをメンバーみんなで山分けしました。しかしこれは違法ではなく社会的なニーズもあるんですが、公にはできません。万が一買い取っても経営が立て直せないようなクズ物件だったら泣くしかありません。ですから、危なっかしいマネーゲームと表現したわけです。

こういう仕事をやっていると、いろんな怪しい情報が入ってきます。例えば今住んでいる家の土地は、なかなか開発されなかった里山でした。これがいよいよ開発されるという裏情報を入手して、僕はその一部を買い取りました。これが大規模開発されて宅地として大人気になったので、僕は現在大儲けしていますし、その広い土地に自分の家を建てることができました。

しかしとある離島の土地がリゾートホテル用地になるという情報で約3億円で買ったら、バブル崩壊でその計画が立ち消えになって大損を出したこともあります。この利益と損失をまるっと計算して、38歳時点での稼ぎが約4億円弱だったわけです。

このマネーゲームは違法ではありませんが、誰にでもできるものではないし、精神力と頭脳の回転、そして調査力や決断力、交渉術が極限まで試されます。これに比べたら、株式投資は比べものにならないぐらいイージーでした。そしてこれはヤ◯ザに海に沈められる可能性もあります。実際、ヤ◯ザがみんなで借りていた事務所に押しかけてきて、たまたま事務所にいた僕の首に抜き身の日本刀をあてて、「手を引け」と言ってきたので、死ぬかと思いました。

ですから、良い子はぜったい真似しないほうが良いと思います。