中川昭一という政治家についてどういう印象がありますか？

まずお父さんの中川一郎さんを含めて「酒は怖いなぁ」と思わされました。お父さんはとても自殺する人には見えなかったんですけどね。お父さんが亡くなられた時は、僕はまだ就職していなくて、とある代議士の私設秘書のアルバイトをしていたんですが、その代議士とお父さんが割と近しい関係だったので、お使いにも行ったことがありました。最初は病死と情報が入ったので、「えっ、あの元気そうな方が」と思ったものです。自殺の情報を最初に聞いたのは確か福田赳夫さんの秘書の方からでしたが、これでさらにびっくりしました。

昭一さんの方は、このお父さんとはぜんぜんタイプが似ていませんでした。生真面目な勉強家という印象です。自民党の代議士はだいたい族議員として得意分野があるんですが、昭一さんは農水族の議員と目されていたのに、もともと興銀マンだったので財政と金融に明るく、地元の関係で北方領土問題に熱心で、郵政や文教政策にも一家言あるという珍しい人でした。

タイプとしては、お話ししていかにも麻布っぽいなぁと思った記憶があります。スマートでそつがない。理論が整然としている。でもちょっとおぼっちゃまっぽいところもありました。自民党の保守派パリパリの癖に、けっこうラディカルなこともおっしゃったのでびっくりした覚えがあります。

お父さんの関連から中川グループを経て福田派に合流したんですが、僕が中曽根総理番から清和会担当にまわった時には石原慎太郎さんや平沼赳夫さんなんかと清和会入りしたばかりでした。ピカピカの一年生議員でしたが、お父さんの縁もあって、安倍晋太郎さんや福田赳夫さんが可愛がっていましたね。

思うんですが、同じ清和会と言っても、安倍晋三さんとも小泉純一郎さんとも近しいってなかなかないことなんですよ。小泉さんなんて、明らかに政治的なスタンスには違いがあったのに、すごく可愛がっていました。それも清和会から袂をわかって亀井グループに行って、さらに志帥会に合流していたのにですよ。これだけでもなかなかの人物だってわかります。僕が好きだった政治家に塩川正十郎さんという方がいらっしゃったのですが、その塩川さんも中川君は勉強熱心だって認めていましたね。その後も昭一さんは、政治スタンスには若干違いがありそうな麻生太郎さんの擁立に動いたりしています。

お人柄ですが、根っこの根っこではやっぱりおぼっちゃま気質の理想家だったと思いました。だからおんなじおぼっちゃま気質の安倍晋三さんや麻生太郎さん、小泉純一郎さんなんかと波長が合ったんでしょう。一緒に行動した平沼赳夫さんは麻布の先輩後輩だし、亀井静香さんは見かけはゴツいですが、ものすごい勉強家ですからね。この辺とも上手くいく。でも政治的野心たっぷりのコテコテの地方議員叩き上げとかとはちょっと合わない感じでしたね。清和会を抜けたのはお父さんの代から世話になった亀井静香さんや仲が一番良かった平沼赳夫さんの影響もあるんでしょうが、その当時の清和会の有り様にも我慢が出来なかったのかもしれません。

その点で政治家として、「鈍感さ」とか「図太さ」に、ちょっと欠けていたんじゃないでしょうか。それがストレスになって、酒に走ってしまったような気がします。

僕は祖父が代議士だったので、とある方に衆議院選に立候補する気はないかと打診されたことがあるんですが、いろいろ考えて、これがないので自分には政治家が向かないと思ったのも、この2つの資質でした。政治家ってあんまりあれこれ考えて、思い悩む人にはできない商売なんですよ。まあ僕の場合は、それ以前に女性スキャンダルで引っかかりそうですが😅。