絵を買う人に地域差があるのかなと気になりました

たぶんギャラリーを持たれていると実感されていると思うんですが、日本で「絵画を買う人」というのが、そもそも非常に少ないです。なんだったかの調査では、これまでの人生で絵を買った経験がある人は、わずか7-8%でした。さらにその買った絵画が100万円を超えている人は、そのうちの3%でした。1万人の7%は700人です。このうちの3%は21人です。ところが日本の絵画市場の金額ベースで4割をこの層が占めます。1000万円以上という括りの調査はないんですが、極めて少ない人が、日本の絵画市場を支えていることは確かです。

ですから、こうなると「どの人が買う」であって、「どの地域の人が買う」ではないんですよね。高額品になると画商も「この人なら買いそうだ」と話を持って行きます。海外の大手オークションハウスでさえそうです。日本で億単位の絵画が国内流通することは少ないですから、こういうものはニューヨークだとかロンドン、香港といったところでオークションが開催されます。実際の作品を見ないでビッドされる方もいらっしゃるようですが、多くは内覧に現地まで足を運びます。もうこれはピンポイントで「この人」であって、地域は「たまたまその人が住んでいるところ」になります。

ただこの結果として、「大金持ちが多い地域」あるいは「美術館が多い地域」にこうしたコレクターが多い傾向はあります。その意味ではやっぱり東京は別格です。神奈川は地域によると思います。千葉と埼玉にコレクターは少ないです。首都圏はこんな感じですね。京都や金沢なんかは日本美術のコレクターがけっこういます。兵庫(神戸など)や福岡はいますが、大阪は人口に比べて少ない印象があります。後は本当に「地域ではなく人」です。「◯◯県の◯◯さん」といった感じです。

ただ東京といってもいろいろで、中央区で画商をやっていて、趣味でご自宅のある多摩地域に画廊を開いている知人がいるんですが、画廊の方は家賃どころか光熱費さえでないと苦笑されています。ここはだいたい1万円から50万円ぐらいのものしか飾っていないんですが、それでもぜんぜん売れないそうです。確かにいつ遊びに行っても閑古鳥が鳴いています。

置いているのは画商として扱っていうもののうちのお値段が張らないものなので、けっこう良いものです。それもお値打ち価格なんですけどね。この間もドイツやポーランドの現代版画家や金子國義のリトを合計3枚ほど買ったんですが、相場よりだいぶお安かったです。でも観にくる人さえいないんだとか😅。こういう地域差もあります。

なおGDP比で見て、日本の美術品市場はとても小さいです。大きなオークションハウスの拠点があることも影響していますが、世界の美術品市場は4割ぐらいが米国で、英国、中国の3ヶ国で80%以上を占めています。次いでフランスで、日本の市場規模は世界市場の3%ぐらい。ぜんぜん存在感がありません。ですから大手オークションハウスのアジア拠点はおおむね東京ではなく香港にあります。その結果、売り上げベースで言うと、東京は香港の6分の1以下です。