「出来の良いイミテーション」に価値を見出すことはありますか？

これが難しい問題で、「本物と偽って流通させること」を目的に作られたイミテーションは、どんなに出来がよかろうと「贋作」になります。贋作を流通させるのは犯罪行為です。

しかし、元の品があまりに高価であったり、美術館や由緒正しいところに所蔵されていたりして、手に入らない場合があります。このイミテーションを作ってもらって、自分で楽しむ限りにおいては、犯罪ではありません。こういうイミテーションを日本美術では「写し」と言います。「光悦写し」といった具合です。

この「写し」も多様で、単に元の作品(本歌、と言います)のモチーフを利用しているだけのものから、本物そっくりに作るものまであります。この「そっくり」の場合、明らかにイミテーションとわかるチープなものから、それ相応の美術品と言えるほど素晴らしい出来栄えのものもあります。後者の場合、「◯◯写し」といった呼び名で、それ自体が美術品として流通することも珍しくはありません。

ここで悩ましいのが、本歌にある落款や銘まで真似るかどうかです。ここがかなりグレーゾーンなんです。

なおこれとは別に、のちに有名な画家になった人が、画学生の頃に、勉強のために有名な絵画を模写した場合があります。こういったものは、大きな価値が付いて流通する場合がしばしばあります。