新宿駅の中に新宿ベルクという老舗飲食店があるのですが、 行かれた事ありますか？

僕が新宿に行き始めた頃にはもうあったお店だからね。知っているし、行ったこともある。もっとも僕が「ベルク」に一番寄ったのは、「ルミネエスト」がまだ「新宿ステーションビル」という名称で、「ベルク」がまだ今みたいなセルフサービスの何でもありのお店になる前の「純喫茶」(死後だねぇ🤣)だった頃。

中高時代に新宿に行く一番ありがちな要件は、「新宿紀伊國屋書店」に本を買いに行くことだった。新宿は僕のシマではなかったから、デートでは使わなかったからね。となれば、お腹が減ったら紀伊國屋書店の前川國男っぽい建物の地下1階にあるスパゲッティ屋(あれをパスタ屋なんてオシャレには呼ばせない🤣)か、カレー屋で腹ごしらえして、本を探し、何か面白いものがやっていれば紀伊國屋ホールという小さなホールで劇を観る。

そして紀伊國屋が隣でやっていた「アドホック新宿」に入っているお店で何か面白いものはないかと探して、紀伊國屋裏の「DUG」っていうジャズバーか、アルタ裏にあった「DIG」っていう会話厳禁のジャズ喫茶で運良く席が空いていれば、難しい顔をしてジャズを聴いて帰ってくるというのが、僕の新宿黄金パターンだった。「DIG」は席が空いていないことが多かったし、今の靖国通りにある「New DUG」になる前の「DUG」は、中高生にはちょっと敷居が高かったけれど。「DIG」は行けばびっくりするような有名人も隣でやっぱり難しい顔をしてジャズを聴いていた🤣。

これに食い盛りになると「桂花」っていう熊本ラーメン屋が加わったり、高校生の頃からは勇気を出してナベサダや海外の有名ジャズミュージシャンがふつうにライブをやっていた「新宿ピットイン」も今の場所に移転する前は紀伊國屋裏にあったから、のぞいてきた。

とまあこんな新宿黄金パターンが崩れた時、しおしおと「ベルク」に寄って紀伊國屋で買った本を広げてコーヒーを飲んで、渋谷経由で自宅に帰ってくるのが僕にとっての「ベルク」というお店の存在価値だった。

その後は新宿に行く理由がさらに多様化して、大学の頃はシモキタの本多劇場での公演がはねた後、本多劇場近くの焼き鳥屋さんで飲んでいた小劇団の女優さんと仲良くなって、今度「シアタートップス」で公演をやっているから花束を抱えて来いと言われたり、新宿のちょっと高いけれどいろんな俳優さんや編集関係の人間が集まるバー「Nadja」やその隣にあって地下で繋がっている若い編集者御用達の「陶玄房」っていう居酒屋で深夜まで飲んだというのは以前回答した。この辺が大学時代から社会人で独身だった頃のパターン。

「ベルク」が今の業態になったのは僕が30歳ぐらいの頃の話で、その頃には新宿は3丁目の飲み屋に行くか、西口の高層ビルやホテルに取材に行くのが新宿に行くメインの要件になっていた。「ベルク」がルミネとの立ち退き問題で名を馳せた頃には行く理由がなくなっていたので、ほとんど行っていない。

なお、僕が新宿で一番行った喫茶店&バーは、まず間違いなく靖国通り沿いに移転してからの「New DUG」。編集者やカメラマンとの打ち合わせでめちゃくちゃ使った。1980-90年代に新宿の「DUG」を知らない編集者やカメラマンはモグリだったから、「どこでお会いしましょうか？」「DUGはご存知ですか？」「もちろん知っています」という感じで話が進んだ。

「DUG」で昼間打ち合わせして別れたはずの荒木経惟さんと、深夜また「Nadja」で顔を合わせたりして、お互いバツの悪い思いをしたりしたけれどね🤣。