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厚生年金の財源を国民年金に充てると言う記事を読みました。

質問

厚生年金の財源を国民年金に充てると言う記事を読みました。以前も同じような記事があったかと思うのですが、また出てきたようです。
国民年金に不安があって、自営業ではなくサラリーマンを選択したという人もいるのではと思うと、こう言う裏切り方は良いのか?と考えてしまいます。
りおぽんさんはたくさん支払ってきたのでしょうが、考えを聞かせて欲しいです。

 

回答

厚生年金の財源を国民年金の財源に流用するのは、本来の目的を逸脱していますし、短期的な弥縫策に過ぎないので根本的な問題解決にはなっていません。その意味で僕もマズいとは思います。でもそれじゃあどうするのかという代替案を考えるのが難しいんです。「マズい」と言っている論者はいっぱいいますが、「なるほど、それならこの問題が解決される」と僕が納得できる解決策を提示した論者はまだいません。

まず年金の仕組みですが、自営業者、専業主婦、フリーランスや就業時間の少ないパートタイマーやアルバイト、それに無職の人は国民年金のみで、これを「年金1階建」と言います。会社員や公務員などの2号被保険者にだけは、厚生年金がプラスされる、「国民年金+厚生年金」で、これを「年金2階建」と言います。よく若い方に厚生年金の財源が国民年金の財源に流用されると聞いて、自分たちのもらい分が減るんじゃないかと憤る方がいますが、国民年金の支給額が減れば自分たちの年金支給額の合計は当然ですが減額されます。

僕は来年65歳になるので、年金の支給をどうするのか決めろという通知が、年金事務所をはじめとしていろんなところから来ています。「いやいや僕も年金を受け取る年になっちゃったか」と苦笑して送られてきた書類を眺めているんですが、それで判明したのは、国民年金の支給額がとても少ないということです。僕は若い時から国民年金の保険料をずっと最高額払い続けてきたはずなんですが、それでも支給額は月額7万円行きません。「これだけの人はどう暮らすんだろう」と思ってしまいました。

一方、厚生年金も支給額の上限なんだそうですが、国民年金の3.5倍程度でした。厚生年金の財源にはまだ余裕があるようなので、ここに手を付けたのかなぁと思ってしまいました。

僕の場合はこの「公的年金2階建」に、勤めた会社の制度に依存するんですが、確定給付年金や確定拠出年金という私的企業年金の3階目、これに若い頃から掛けてきた「終身保険」や現在ではiDeCoと呼ばれている「個人型確定拠出年金」など私的個人年金の4階目があって、合計するとまずまずの金額になることがわかってホッとしています。年金で暮らす予定は今のところありませんが。

話を元に戻すと、僕の現時点での結論は「国民年金では現在でも給付額が少な過ぎて暮らせないだろう」ということです。満額の僕で年間80万円、だいたい60万円台の人が多いそうです。しかも財源難で、その維持に苦労しているわけです。考えられるとしたら、次のような方策でしょうか。

①黙って国民支給額を減らす。これが一番ストレートですが、この結果、大量の生活保護受給者が生まれるのは確実です。だって国民年金のみの人は明らかに生活保護の支給要件を満たしますからね。生活保護費の財源は3/4が国で1/4が地方自治体と言われます。多額の税金が投じられることになります。地方自治体には今でも財源が乏しいところもありますから、最終的には住民税の増税につながりそうです。

②国民年金の財源確保策を講じる。これもわかりやすいです。国民年金保険料を大幅に引き上げる手がまず考えられます。国民年金保険料は長期滞納すれば、財産の差し押さえもできますし、障害年金や遺族年金が受け取れなくなるというデメリットもあります。投資を始めたばかりの人はよく「国民保険から脱退して、その分を投資のお金に回したい」と言った理屈をこねますが、現時点で国民年金は女性が満額保険料を納付して、65歳から年金を受給して女性の平均寿命まで生きれば、だいたい保険料の2倍が受け取れるという、割と率が良い資金の運用方法です。

制度的にも脱退は認められていませんから、払わなければやがてまるっと差押えを食らったり、万が一の時の障害年金が受け取れなくなるというリスクの多い行為です。保険料が引き上げられれば、保険料に対する支給額のリターン率は減るでしょうが、それでも払わないわけには行きません。会社員や公務員であれば、原則的に給与から天引きされるはずなので、この意味でも避けようがありません。

この国民保険料の引き上げを避けるなら、財源として国民年金の半分を占めている国庫負担率を大幅に引き上げる手もありますが、この国庫負担は原資が租税、つまり税金ですから、大幅な増税が行われる可能性が高いと言えます。

③厚生年金の支給額を減額する。現在、厚生年金の財源は被保険者の支払う保険料が7割、国庫負担が2割、積立金が1割という構成です。国民年金の財源が不足していて、厚生年金の財源が潤沢にある。その上で国民年金保険料の引き上げも、増税も回避したいのであれば、国が厚生年金の国庫負担をやめて、それを国民年金の財源に振り替えれば良いという理屈です。

これは厚生年金の財源の流用と意味合いが変わりませんが、制度としてきっちりとやってしまうわけです。これなら文句の付けようがないですが、当然、厚生年金の財源が恒久的に減り、将来的に厚生年金の財源が不足して支給額が減らされる可能性もあります。

④公的年金制度をやめてしまう。これも一つの解決策ではあります。老後の年金は企業年金とiDeCoなどの個人の私的年金に一本化してしまえ、というわけです。会社員や公務員なら企業年金などとの2階建になりますが、現在、国民年金のみの層は、iDeCoなど個人で描ける私的年金だけになります。

勇ましい制度改革で、僕もない手ではないと思うんですが、現在、公的年金を支給されて生活をしている人たちの年金支給をいきなり止めるような乱暴なことはさすがにできません。

これから議論を深めて、自分たちで私的年金を積み立てるように準備させれば、新しい制度が適用されるのは、どんなに早くてもいわゆる「氷河期世代から」だと僕は推測しています。

現在、iDeCo(個人的確定拠出年金)の掛け金の上限は、自営業者は月額6万8000円だったと思いますが、会社員や公務員なら月額1万2000円-2万3000円程度です。これでは「老後の蓄え」にはとうてい足りませんから、上限が大幅に引き上げられると予測します。結果的に毎月支払う納付額は大幅に増えるでしょう。公的年金の保険料が引き上げられるのと、あまり変わらないことになるんじゃないでしょうか。

iDeCoにすべて依存するように制度改革すれば、毎月どれだけ掛け金をかけるのかは自己責任になります。また運用も自己責任ですから、受け取り額が掛け金より少ない元本割れがふつうに生じます。それでもこれをやる意味があるのは、iDeCoだけにすれば、税金で優遇される以外、国庫の負担がなくなって、国の財政のプライマリーバランスに寄与できることです。

年金改革は待ったなしの情勢ですから、これも当然考慮すべきなんですが、これまで国民年金や厚生年金に国から何がしかの援助を受けられていたものがばっさりなくなるわけです。当然ですが掛け金に対するリターン率が悪くなって、老後の年金が不足して生活保護を受給せざる得なくなる悲劇も増えるでしょう。それでもこのドラスティックな改革をするのかどうかです。

僕らにはあまり関係ない話なんですが。この国のさまざまな矛盾の被害者であり続けてきた「氷河期世代」に、また年金問題の帳尻合わせを強いるのは、僕はさすがに気が引けるんですよねぇ。

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