りおぽんさんが宿泊される旅館だと心付けのお礼があることも多いと思いますが、何もないこともありますか。

旅館で仲居さんに渡す心付けの本来の性格は、仲居さんへの私的なチップです。ですから仲居さんがそれをちゃんとポケットに入れてくれれば、そのままです。でも宿から領収書が出て、お礼の品まで渡されるのは、仲居さんがそれを受け取らずに宿の人に報告して、宿のご主人が「心付けは不要ですよ」とやんわり伝えてきたわけですから、そんなことをされる方が僕には残念です。

最近の旅館はサービス料を取りますから、心付けは基本的に不要です。それでもお世話になる、あるいはなった感謝の意味でしいて渡すものですから、領収書だとかお礼の品だとかを期待して渡すなら、宿の人に面倒をかけるだけなので、やめた方がマシです。

旅館で心付けを渡す習慣が出来たのは、その昔、仲居さんたちのお給料がとても薄給で、お客さんから貰う心付けが頼りだった時代があったからです。海外のホテルやレストランで給仕をしてくれる人やベッドメイクしてくれる人、荷物を運んでくれたベルボーイなんかにチップを渡すのとおんなじ理屈です。海外のホテルやレストランでチップを渡して、領収書やお礼の品を期待する人はいないと思います。

僕は旅行に出る時、綺麗な5000円札や1万円札を入れたポチ袋をいっぱい持っていきます。馴染みの旅館などであれば、仲居さんが最初に給仕に来てくれて、引き上げる時、「またお世話になりますね」とかいってそのポチ袋を一つ渡します。馴染みの旅館だと、その部屋付きの仲居さんがいたり、宿の人が気を利かせてくれて、僕のお気に入りの仲居さんを付けてくれたりします。

心付けを渡すと、それが宿の人に報告が行って、女将がお礼の挨拶にみえたりすることはありますが、領収書を渡されるような不粋なことはされたことがないですし、お礼の品を渡されて、心付けを拒否されたこともありません。

初めて泊まる宿では、心付けは不要と明記されている旅館も昨今は多いですから、そういう旅館ではいきなり心付けはわたしません。ただ仲居さんに特別なお願いごとをしたり、とってもサービスが良かったりした場合、そのお願いごとをやってもらったり、宿をチェックアウトする時、「ありがとう。お世話になったね。今度またよろしく」といった具合にポチ袋を渡します。

宿を出る時であれば、宿の人が領収書を切ったり、お礼の品を用意するヒマガないので、好都合なんです。でも旅館の人は案外そんなことを覚えているもので、再訪すると、女将さんから丁重な挨拶があったりします。また僕がその仲居さんのサービスを気に入った証にもなるので、その仲居さんかそうでなくても同等のサービスができる仲居さんを付けてくれる場合もあります。

この他、僕は料理がとっても美味しくて工夫が凝らされていた場合、それなりのまとまった金額を封筒に包んで、仲居さんに「板場の人で分けるように伝えてください」と渡す理由を添えて渡す場合があります。これで領収書を切られたり、つっかえされたりした経験はありませんが、女将さんが料理長さん(板長さん)を同行されて、お礼に見えることが多いです。

チップを渡して領収書を出されたり、ましてやお礼の品なんて渡されたら、「心付けの渡し方が不味かった」と悩むのが、僕の感覚です。