フレンチや自宅でもチーズの楽しみ方を教えていただけると嬉しいです。

フレンチのコース料理でチーズワゴンサービスがある場合、これは食後のデザート(デセール)の一種ですから、食べられれば食べれば良いし、満腹なら断ればいいだけです。無理してでも食べるものではないです。

僕の場合、フレンチでコース料理しかないお店ではコース料理を注文するしかないですが、アラカルトがあるお店では、まずアラカルトで自分が好きなものを自分で選んで食べる場合がほとんどです。この時、自分の頭の中でどんな順番で食べようか考えるのが楽しいんですが、食前酒を飲み終わって、いよいよオードブル(前菜)とワインに移る時、よくオードブルとしてチーズを食べます。

みんなフレンチについて難しく考え過ぎで、この辺は気ままでいいんです。特にビストロと言われるようなくだけた小さなフレンチの場合、僕はテーブル席ではなくカウンター席に座ってシェフなんかとお話ししながら食べることが好きです。この時、オードブルでシェフやソムリエ、メートルドテルなんかの適当な人に、「今日食べごろのチーズは何がありますか」と聞きます。いくつか教えてくれますので、そのうちの食べたいものを「オードブルにちょっと切ってください」とお願いします。たくさん食べるとあとの料理が美味しく食べられないので、「少量」です。

我が家では僕と妻がチーズ大好きで、娘はどちらかと言えば嫌いです。ですから3人で行くと僕と妻だけが出してもらいます。僕も妻も一般的な白カビチーズより、青カビチーズやウォッシュと呼ばれる酒や塩で洗ったタイプのチーズ、シェーブルと言われるヤギの乳で作ったちょっとクセが強いチーズを好むので、2人分これらを何種類か切ってもらいます。種類を選べる場合、選ぶのは僕の役割です。合わせるのは基本的に赤ワインです。

こういう2人の習慣は若い頃にフランスで気兼ねないビストロを食べ歩いていて付きました。別にビストロとかリヨンのブションと言われるような大衆食堂では、気取る必要なんてありませんから、食べたいように食べればいいんです。フランス人は食後のデセールとしてよくチーズを食べますが、日本人の胃袋にはこれはちょっとタフな場合があります。でも食べたい。だから僕と妻はオードブルとして「チーズをちょっと切ってもらう」、それだけのことです。

この他、僕がチーズを食べるのは、赤ワインを飲んでいる時のおつまみ、そして朝食などの時の付け合わせです。

僕は大学4年生の時、研究資料を集めるという名目で、パリの安ホテルに約1ヶ月強滞在していたことがあります。実際にはひたすら美術館をまわったりしていたんですが。

若かりし頃ですから、本格的な安ホテルです。トイレは1フロアに共同トイレがあり、共同シャワーはあんまり良くなかったので、パリの市内にある共同シャワー施設に通いました。ですからこんなホテルにレストランはありません。食べたい時は安いビストロに行ったんですが、これを毎日はできません。

ですから自分で「ブーランジェリー(パン屋)」に行ってまずパンを買い、「フロマージェリー(チーズ屋)」に行って、その日の食べ頃のチーズを聞いてそれを買い、「トゥレトゥール(お惣菜屋)」に行ってお惣菜を買い込み、「シャルキュトリ(豚肉屋)」に立ち寄ってソーセージを買い込んで来て、「マガサンドヴァン(酒屋)」で買っておいたワインを開けて、「今度来る時はムーリスやプラザアテネに泊まってやるぞ」と思いながら😅、部屋で夕食を食べました。この残りを朝食として食べたんです。この生活の中で、チーズ(フロマージュ)をやたらと食べる習慣が付きました。

フランス人の食生活にチーズは欠かせないもので、街をちょっと歩けば必ず1軒はフロマージェリーがあります。日本で肉屋や八百屋があるのとほぼ同じ感覚です。僕も妻も欧州本土の滞在経験が長いので、チーズがない食生活は考えられませんが、そうでもない娘はあまり好きではないわけです。食なんて本来、その人の好きなように食べればいいんです。