他人のゴーストライターの経験はあったのですか？

まず僕が経済記者をやっていた時、経営者なんかが自分の過去について語る連載企画がありました。けっこう評判の企画でしたので、これに掲載してもらうことを期待する経営者がいっぱいいました。しかしどんな名経営者であっても、文章を書くトレーニングなんて受けていませんから、実際に自分で書くことは実質的に不可能です。

ですから経営者が自分で書いた形式を取りながら、記者が話を聞いて、その経営者が語ったように文章をまとめます。これをその経営者に読んでもらってファクトチェックをしてもらい、その上で新聞に掲載していました。これをやったことがあります。

そして経営者や政治家というものは、自著を出したがるものです。しかしこれを自分で完全に書ける人は滅多にいません。粗々の原稿が書ける人はまだいい方で、たいていは「どんなことを書いて欲しいか」を言葉で伝えて、それをゴーストライターがまとめることになります。図版や裏付けになるデータを揃えるのも仕事です。

テレビ局記者時代や新聞記者時代、こういう仕事を引き受けることは禁止されていました。しかし僕が新聞社を退職後、お付き合いがあった政治家や経営者からお願いされて、引き受けたことが何度かあります。政治家の場合、それを支持者に配布したり、出版記念パーティーを開催したりするのが目的です。

金銭的にけっこう割が良い仕事の上、政治家の本音が聞けたり、ヒアリングの過程で自分の意見を話して議論できるのが、他ではなかなかできない面白い経験でした。今なおWikiなんかでその政治家の自著として、参考文献として引用されているのをみると、なんかくすぐったい気持ちになります。

こういう政治家とは今なおお付き合いがあって、招かれて食事をしながら、政策や政局について意見を聞かれることがけっこうあります。